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最近はミソフォニアのことばかり書いています。もうミソフォニアブログです。

少し疲れた話

自分は今大学院生で、まあ年に数度は学会に参加したりするわけだが、それはそれは苦行なわけである。 私が先日参加した学会は、参加人数が150人超のもの。 出発前は怖い気持ちでいっぱいだった。静かな会場に、キーボード音・鼻をすする音・くしゃみ・体の揺れ・咳。不安要素はいくつもある。 それでも聴きたい発表もいくつかあるし、有意義なこともきっと多いだろう。 なので参加させて頂いたわけだが、予想以上の以上に辛い気持ちを味わうことになってしまった。 今思い出しても胸が締め付けられる。すごく悲しいことがあった。

その学会は旅館の会場を使って行われるのが恒例。三日間連続で開催され、他の参加者の人と相部屋で泊まり込むことになる。私の部屋は、自分の研究室の人と同じ部屋だった。修学旅行気分だ。

学会会場には早めにたどり着き、右端に配置された机の一番右の席を確保した。そしてイヤホンを耳につけてホワイトノイズを流す。発表を聞ける程度の音量にした。 左隣の席に座った人のキーボード音・指の動きに苛立つ。ホワイトノイズの音を一時的に大きくして、体をうんと前のめりにして、指先を左の目尻に添わせて左隣の人の動きを視界から隠した。前の人が貧乏ゆすりをして机にかかったテーブルクロスが揺れている。視界に入り込まないように、目の下に拳を当てるようにした。隣の人が大きなくしゃみをした。鼻をすすった。別の人は咳をした。大きいため息をついた。遠くの席から豚のように鼻を鳴らす音が聞こえた。音量を上げて、目を瞑って、静かに深呼吸。耳の奥に音が張り付いてしまい、苛立ちや不快感が拭えない。が、少し落ち着いたら音量を元に戻して、発表に聞き入った。

夕食時、向かい合わせになった男性がアホかというほどの勢いで蕎麦をすすっていて、思わず睨んでしまった。しかし、会場は広く、雑談の声に溢れていて、それ以外は特に気になることはなかった。背後にいた男性団体も汁/鼻すすり祭りだったけど、まあ。。ご飯はとても美味しく、良い気分だった。 寝るとき、襖の奥から聞こえるキーボード音で眠れない。これはホワイトノイズで完全に回避できた。 てな感じで、1日目。かなり自分で我慢できていたので、とてもいい状態だ!と喜んだ。この調子なら、まだ耐えられそうだ。しかし、油断か、ストレスか、わからないが、2日目の昼は地獄だったのである。

2日目の昼になると、会場の止まない音にだいぶ気持ちが疲れ始めていた。お昼ご飯の時間になり、研究室のみんなでお昼ご飯を食べに行った。店は同じ研究室の人が決めてくれていた。ご飯をみんなで食べることは別の意味では憂鬱だったが、私も人と会話することが嫌いなわけではないし、美味しい料理も食べたかった。あまり考えずに参加した。 しかし、楽しい団欒、ともいかず。とりあえず、食べ方が特に汚いと私がブラックリストに入れている人とは離れた席になりたかったわけだが、公表してないため、言えない。 テーブルに熱いお茶が届く。う、嫌な予感。みんながお茶を飲む。予想通り音を立ててすする。店内は静かで、自分の耳いっぱいに響いた。 汚い汚い汚い。なんでわざわざ音立てるの。すするなバカ!と言いたかった。 まあとにかく早くご飯が届いてほしい。そしたら、食べることに集中して気がそれるかもしれない。 食べ物は注文してしまったので、逃げられない。とりあえずは、食べ物が届くまでは我慢しよう、と深呼吸した。 雑談もする気になれないのでその場に合わせて愛想笑いをしようとしたが、顔がこわばっているのがわかったのでやめた。

ご飯が届いたところで、まあ音が止むわけでもなく。食べ物をすすって食べる音が聞こえて、むしろエスカレートしていった。 汚い汚い汚い。 右のほうの席に座った別の男性団体のほうから、丼物か何かを強くすする音が聞こえる。前、左、右。多方向から汚い音が聞こえる。本当に殺意でいっぱいになった。どんどん食欲がなくなるのを感じた。 「無理に我慢することない、逃げることも一つの手」だと母に言われたことを思い出した。 もう限界だったので、すぐに取り出せるように手元に置いておいたイヤホンを焦る手で解いて、耳に入れた。ホワイトノイズ。 周囲の人が私がイヤホンをつけたのに気づいたのか、数度視線を感じた気がする。 せっかく研究室の人が開いてくれたお昼の会。会話を楽しんだり、地元料理を楽しんだりする会だというのに、その場で押し黙っていた一人が突然イヤホンを着けた。きっと変な話だと思う。 「本当は会話したいんだけど、どうしても音が我慢できない。イヤホンをしているけど、特に気にしないでくれ」そう言えたら、誤解も解けるのだろうか。でもここでそれを告白するのは難しかった。 音。音。音。。粗探しをするかのようにノイズ越しに嫌いな音を見つけては、苛立ちのままに1つ2つと音量を上げていった。

みんなが食べ終えた頃、お金を集計するときになり、イヤホンを外した。 ああ、なんかもう見る見るうちに元気がなくなっている。隣の同期もきっと気づいている。 「つまらない」だとかそういう理由じゃなくて、実はずっといろんな葛藤があって、今この場だけじゃなくて、研究室にいるときも学校の授業も、何年もの間、内側でぐるぐると辛い苦しい思いをしてきた。顔にも態度にも出しても「ただの気分屋だから」とか思ったかもしれないけど、誤解しないで私のことを知って欲しいと思った。そんな気持ちが我慢できなくなって、隣の同期に小声で言ってしまった。 「今更なんだけど、人の立てる音とかがすごく気になっちゃうんだよね… ずっと…」 「へえ」 うわぁ、ついに言った。どうにでもな〜れ〜★と彼女の返答を待つ。しかし、彼女は予想外の返答をした。 「昨日とか寝れた?空調の音とか」 いやいや、違う。人の音!人の音! 「そうでなくって、人の生活音だいたい全般なの…食べる音とか。だから、あんま、こういう楽しむべき場で楽しめないから。。」 周囲の人は別々におしゃべりしていたし、小さい声だったので、たぶん彼女にしか聞こえてないと思った。これで理解されて、大変だったねと、あわよくば音を立てずに気を使ってくれたりするのだろうか。。

「ふうん… そうなんだ」 しかし私の期待も虚しく、彼女はそう言ってお茶をすすった。音を立てて。

泣きたくなった。何も理解されなかった。緊張の糸がプツンと切れた。 お金をおいて、「先に行ってる」と一人で店を出た。道中、声をあげて泣きたい気持ちになった。ホテルの部屋には誰もいないはずだから、そこで声をあげて泣こう。それまでは我慢しよう、とか思うも、マフラーに顔を埋めてぽろぽろ泣いた。 ホテルの部屋につくと、誰もいないはずの部屋に既に先客がいた。先輩が室内のソファで作業をしていた。 「お疲れ様です」とだけ言って横切り、部屋の奥の方でうずくまって横になった。

先輩が心配してくださり、心配の声をかけてくれた。体調が悪いのかと思っているようだった。嘘をつくのは忍びないが、一時的に気持ちが悪いことにした。

まだ胸が苦しい。本当に本当に嫌な音だった。死ね!本当に全員死ね!と、畳に顔を伏せ、歯を食いしばって爪を立て、攻撃的な気持ちに耐えた。憎さから来る涙がぼろぼろ落ちた。しかしすぐに憎らしい気持ちは消え、悲しくなって来た。ずっとこのまま、楽しめる場でも勉強できる場でもずっとずっとこのままなのか。座布団に顔をうずめて、声を押し殺して泣いた。簡単に治らないこともわかっている。病気と分かったはいいが、治療法もない。顔をぐしゃぐしゃにして泣いた。たまに少し呻き声が出てしまった気がするけど、多分海風のうるさい部屋だったので、先輩には聞こえていないと思う。30分くらい涙が止まらなかった。このときの記憶は思い出すだけで今も涙が出そうになる。

更に20分ほど経ち、泣いたことでスッキリしたのか、私は元気になっていた。もう午後初めの講演は終わってしまっていたが、次に聞きたい発表があったので、泣き顔の赤みが引いて来たあたりで部屋をあとにした。夕方、研究室の人たちと会って話したが、特に気まずいこともなく、普通に接してくれた。何も聞かれなかった。 私の(研究室の人への)初めての告白がうまく伝わらないまま終わってしまったのは明らかだった。感情的になってあの場から離れてしまったのは申し訳なかった。そして、憎しみでいっぱいになってしまったことも申し訳ない。これも、冷静になって文章をかける今だからこそ言えることだけれど。。申し訳ないです。

その日の深夜には飲み会が開かれた。せっかくだし、私自身お酒をたくさん飲みたい気分だったので、参加した。部屋は騒がしく、人の話し声で溢れていて、自分の嫌いな音は全て上書きされていた。お酒も上手に入った。良い気分で解散して、その日の夜もホワイトノイズを聞きながら寝た。

翌日は人と一緒に食事する機会を朝・昼と避けた。いつも通りイヤホンと一緒に一人で食べた。私が前日にわあわあ泣いたときに思っていた「いつまでもこのままなのか」という疑問についてはまあよくわからないけど、とりあえずは辛くないほうを選択した。攻撃と防御なら防御のほうが楽だった。

そんな感じで私の3日目は終わった。この経験を通じてわかったこと・思ったことを箇条書きしておく。

  • ミソフォニアを一言二言で説明して分かってもらうのは難しそうだ

    • まず、初告白時には「病気」と明言するべきだった。
    • 思った以上の以上に、一般の人は私が嫌いな音に気づいてすらいないようだ。。「人の音」と言って全く伝わらなかったことにとても驚いた。
    • 家族含め、今まで身近な関係にある4人にしか告白してないので、私は告白し慣れていないようだ。
    • 常日頃の私はだいたいガサツで、神経質とは程遠い。そんな私が、人の些細(と多くの人が思うよう)な音に反応してしまうのが、周囲は想像付きづらいのかもしれない。(友人談)
  • トリガー音に対する反応の強さは、そのときの状況にやっぱり依存する

    • 帰りの電車は後輩さんと一緒だったんだが、背後にいるおじいさんや斜め左奥にいるおばあさんの鼻をすする音にもムカムカしてしまったけど、このときは心にかなり余裕があった。電車の音とか会話とかがあったからかもだけど。この「時々によって違う反応」がより一層周囲の理解を妨げているかも知れない。
    • 私は実は花粉症で、寝るときは鼻がつまって死ぬかと思った。鼻をかんでもかんでも息ができず、とても苦しい。いざ寝れても、失意ながら鼻息を立てている可能性がある。。人の音に対する反応を10として、自分自身の音に対しては6くらい。人に注意できる資格を持つため、常日頃から自分の出す音に最大限気をつけている。けど、もし私が止むを得ず立ててしまった一つの音が、自分の知らない誰かを不快にさせしまったとしたら。。そう思うと、申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
  • 罪悪感

    • 激しい殺意や怒りが静まった後に、本人と会話をすると、決まって罪悪感が訪れる。今回はそれがより深かった。病名をちゃんと告白できていない手前「ごめんなさい」も言えない。わざわざ言うことでもないけれど。。
    • 自分の中で全てが完結してれば良いのだけど、全てを覆い隠して内部に閉じ込めれるほど、容易いものでもない。。
  • 「病気」ということを知らないままのほうがよかったのかもしれない

    • 「病気なのに」「私は悪くないのに」という被害者の気持ちが、病名を知ったことで芽生えている気がする。やっとのことで行った告白も失敗に終わったとき、「病気なんだから、理解されて当然だ」と心のどこかで付け上がっていた自分に気づいて、気持ちが悪くなった。病名を知る前まで、「細かいことを気にしすぎる私が悪いんだ」と自分を責め込んでいた私のほうが、恨む相手がいて、気持ち的に楽だったかもしれない。でも、どちらにせよ辛くしんどいのだけど。。
  • 薬を持って行こう

    • 効くかどうかわからないけど、こういう我慢が必要なイベントには薬を絶対に持っていこう。。むしろなぜ忘れたんだろう…
    • でも実はここ一ヶ月毎日の服用をサボっている。治したい気持ちはまだもちろんあるのだけれど、薬が実際に効いているのかどうか、信頼できないのだ。。

今は全く考えられないけど、もしこのブログを何かの機会で近くの人々に公表するときがきたら、そのときにはどういう反応をするんだろう。まあ、このことを知ってドン引きするほど他人に繊細な人たちではないと思うので、「ふうん、そうなんだ」で終わると大方予測している。仮に嫌われてしまったとしても、仕方ない。そう覚悟しているのに、なぜここまで伝えることを躊躇しているんだろう。もう10年間以上この症状と共に暮らしているからか、ミソフォニアでない人から見た世界が想像できないという。。